組織を変えるツールとしての意識調査
私たちは、従業員の意識調査を通じて企業のワーク・モティベーションを把握しています。しかし人間の意識を調査しようとなると、そこにはさまざまな困難が伴います。ここでは意識を調査することの難しさ、そして私たちの調査に対する考えを紹介します。
意識は客観的に測れない
タンスの奥行きはメジャーで測れます。あなたの体重も体重計が教えてくれます。では意識はどうやって測るのでしょうか。当然のことながら人間の意識というものは長さも、重さもありませんし、そもそも目に見えるものではないため、客観的に測定することは非常に難しいのです。
たとえば、あなたは仕事に対する意欲がありますか、と質問されたとしましょう。あなたは、仕事への意欲に燃えているわけではなく上司の指示で嫌々残業をしているだけであったとしても、「意欲がある」と回答してしまうのではないでしょうか。もしそれが、人事部からまわってくる記名式のアンケートだったら、なおさらでしょう。このように仕事の意欲という意識を測る場合を考えただけでも、会社からの評価に対する懸念や、世間的な望ましさによって回答はしばしば歪められてしまうのです。
ロールシャッハ・テストというものをご存じでしょうか。インクの染みが何に見えるかによって、その人の性格や傾向を判断するという検査です。これはどのように答えれば正解かということが分かりにくいため、評価への懸念や望ましさの影響が排除されるといわれていますが、この手法自体を疑問視する向きもあります。
ここで挙げた評価の懸念や望ましさによる回答の歪みはただの一例に過ぎません。従業員がどう考えているのか、その意識を正確かつ客観的に把握することはとても難しいのです。
調査が現実に影響を与えてしまう
実は、意識を調査しようという試み自体が従業員の意識を変えてしまう、ということすらありえるのです。
たとえば、以下のようなアンケートが人事部からまわってきたと想定してみてください。
・会社の売上の規模に対して、従業員の数が多すぎると思いますか。
・他の会社でも働いてみたいと考えたことがありますか。
・自分の能力は、職場の同僚と比べて劣っていると思いますか。
あるいは、以下のようなアンケートが人事部からまわってきたと想定してみてください。
・あなたは、会社の将来に希望が持てないと思いますか。
・あなたは、経営の方針はあまりにもわかりにくいと思いますか。
・あなたは、上層部からの指示がすぐに二転三転すると思いますか。
鋭い方ならピンときたかもしれませんが、最初のアンケートでは会社が人員整理をするための布石だと感じて、不安をかき立てられる人がいるかもしれません。2番目のアンケートでは、回答していくなかで会社の将来の展望のなさや方針の不透明さ、指示の一貫性のなさに考えが及ぶことによって、会社への不信感が芽生える人がいるかもしれません。
この2つの例はいずれも極端なものばかりとはいえ、このように意識調査それ自体が対象者の現実を変えてしまうということは大いにありうるのです。
私たちは意識調査を、組織を変えるツールと考えています
これまで述べてきた通り、意識調査の結果を額面通り受けとめることや、安易に調査を実施することには大きな危険が伴います。
それでは従業員の意識調査なんてすべきではないのでしょうか。もちろん、私たちはそうは考えていません。そうではなく、意識調査はうまく活用することによって組織をよりよい方向へと変えていくツールだと、私たちは考えています。
評価への懸念や望ましさによって回答が歪んでいるかもしれない、という前提を受け入れたうえではありますが、調査を実施することによって得られた結果は、従業員の声であることには変わりありません。さらに、調査それ自体が現実を変えてしまうのであれば、人員整理への不安や会社への不信感ではなく、従業員の意識をより望ましい意識へと変えていくことも可能であるはずです。
従業員の現状を正確に測るためではなく、会社の現状を変えるためのツールとして。私たちはこのような考え方に立って、意識調査を通じてあなたの会社をよりよくするお手伝いをさせていただいています。
私たちの調査に対する考えについてもっと知りたい方は、ぜひこちらまでお問い合わせください。