「不満のケア」と「やりがいの創出」――マネージャーが混同しやすい2つの動機づけアプローチ

不満はないけど、やりがいもない?
コラム002a

「給与が上がって、福利厚生も充実したにもかかわらず、部下の生産性はまったく上がらない」。
こうした悩みを抱えるマネージャーは少なくありません。こうした悩みの答えは、1959年に発表されたアメリカの臨床心理学者フレデリック・ハーズバーグの「The motivation to Work(邦題『仕事と動機づけ』 )」の中にあります。
今回はハーズバーグが提唱した「二要因理論」を紹介していきます。

不満を解消しても、動機づけ強化にはならない
ハーズバーグらは、200名のエンジニアと会計士を対象としたインタビュー調査を行い、「仕事においてポジティヴな感情を抱いた具体的な場面」「仕事においてネガティヴな感情を抱いた具体的な場面」についてたずねました。その結果、「不満を生み出す要因」と「動機づけを強化する要因」は同じものではない、ということが判明しました。ハーズバーグは、仕事に対する意欲を左右する要因を以下の2つに分類しました。

1. 衛生要因(不満を生み出す要因)
給与、労働条件、職場の人間関係などが該当します。衛生要因が悪化すると従業員は不満を抱く一方で、衛生要因を手厚く整備し、不満を解消したとしても動機づけにはほとんどつながりません。医療の「衛生(Hygienes)」が病気の予防にはなっても体力を向上させないように、衛生要因はマイナスをゼロにする性質の要因といえます。

2. 動機づけ要因(やりがいを高める要因)
仕事に対する達成感、他者からの承認、責任ある役割、自己成長の機会などが該当します。これらが満たされると、人は仕事そのものに「やりがい」を感じ、より自発的に取り組むようになります。仮に動機づけ要因が十分でなかった場合、強い「不満」にはつながらないものの、十分な成果の創出は難しくなります。
何が「衛生要因」で、何が「動機づけ要因」か、ということについては議論が存在しているものの、「労働環境を整えるだけで、退屈な仕事が面白くなるわけではない」という本質は、多くの職場で実感できることではないでしょうか。

「やりがい搾取」に陥らないための注意点
注意したいのは、パフォーマンスを高めたいからといって「動機づけ要因だけを与えればいい」というわけではない点です。劣悪な労働環境や不公平な評価制度(衛生要因の欠如)を放置したまま、「やりがいを持て」「成長できるぞ」と大きな仕事を任せても、従業員の心には響きません。
動機づけ要因がしっかり機能するためには、まずは衛生要因という安心できる基盤を整える必要があります。

ビジネスへの応用――2つの異なるアプローチ
この二要因理論を実務に活かすには、「不満を取り除くケア」と「やりがいを生み出すアプローチ」を全く別のアクションとして認識することが重要です。「労働環境の整備」によって離職を防ぎ、土台を固める。その上で、「適切なフィードバックや挑戦の機会」を提供し、仕事へのモティベーションを高めていく。マネージャーにはこの二つの役割を両輪として回していくことが求められます。


コラム002b

※画像はAIで生成されたものです。


サブコンテンツ

このページの先頭へ